地震防災

頻発する自然災害から生命を守り、安全・安心なまちづくりを行うことを目的に、迫り来る巨大地震に備えて、「どのような被害が予測されるのか?」、「どのような対策が有効なのか?」について、各種シミュレーションにより予測するとともに、想定される被害に対する対策検討や対策工の詳細設計を行っています。

2次元動的有効応力解析(FLIP)による土木施設の耐震性能照査及び対策工法の設計

想定される地震に対して、土木施設の耐震性能を照査するため、有限要素法による2次元動的有効応力解析(FLIP等)を実施することにより、地震時の挙動をシミュレーションします。また、想定される被害に対して、対策が必要となる場合には、対策仕様を検討した上で、対策後の断面に対するシミュレーションを実施するとともに、対策工の詳細設計を行います。

港湾施設の液状化シミュレーション結果の例(過剰間隙水圧比分布)

各種土木施設の耐震性能照査

港湾施設の岸壁や防潮堤、空港基本施設等の各種土木施設を対象として、レベル2地震が発生した際の地盤の液状化に伴う変形量を求め、許容変形量や止水高さ、許容勾配等の設計限界値を満足するかどうかの照査を行います。その結果、耐震性能を満足しない場合には、対策工法を検討・設計します。

空港滑走路舗装直下における静的圧入締固め工法(CPG工法)による液状化対策のイメージ図

対策工法の検討・設計

港湾施設や空港基本施設等の耐震性能照査の結果、施設の耐震性能を満足しない場合には、現地の制約条件等を考慮した上で、経済性・施工性に優れた液状化対策工法を検討・設計します。

空港基本施設では、滑走路を供用しながらの地盤改良が可能となる、静的圧入締固め工法や溶液型薬液注入工法等を検討・設計します。

性能規定に基づく改良地盤の評価

砂質地盤の地震防災対策等を目的として薬液注入工法により改良された地盤は、薬液の浸透の不均一性や対象地盤の土質の不均質性等の理由により、自然堆積地盤に比べてせん断強度等に空間的な不均質性を有する場合が想定されます。このような改良地盤の評価においては、従来の仕様規定による評価に加え、対象施設の性能規定に基づく評価が求められています。 このような空間的な不均質性を有する薬液注入工法による改良地盤に対し、大学との共同研究により、対象施設の性能規定に基づく評価方法を構築するとともに、当評価方法による改良地盤の評価を行っています。

改良地盤の不均質性を考慮した解析モデルのイメージ

性能規定に基づく地盤評価

供用中の空港滑走路に対する液状化対策として実施された、薬液注入工法による改良地盤に対して、改良地盤の不均質性を考慮した、性能規定に基づく地盤評価を行います。

性能規定に基づく地盤評価では、改良地盤の一軸圧縮強さを統計処理するとともに、改良範囲内の各要素の一軸圧縮強さをランダム場理論により表現した上で、滑走路の性能を照査します。

ダム・ため池耐震診断

大規模地震により利水ダムや農業用ため池の堤体が決壊すると、人命が失われるとともに住宅や農地で甚大な被害が発生します。そのため、地震による被害を未然に防ぐことを目的として、ため池堤体の耐震診断及び対策工の検討・詳細設計を行います。

詳細ニューマークD法によるため池堤体の塑性すべり解析例

塑性すべり解析による耐震性能照査

塑性すべり解析法(詳細ニューマークD法)を用いて、レベル2地震動時に発生するダムやため池堤体の変位量を算出し、その耐震性能の有無を評価します。

耐震性能を満足しない場合には、用地の制約等の現場条件や経済性等を踏まえながら、押さえ盛土や地盤改良(置換工法、混合処理工法等)の対策工法を検討・設計します。

地震動作成

港湾・空港施設等の耐震性能照査や耐震設計に用いる地震動波形は、当該地盤の振動特性(サイト増幅特性)を考慮して作成します。サイト増幅特性は、対象施設や周辺の地震観測地点で実施する常時微動観測に基づき設定します。

常時微動観測の実施状況

常時微動観測

対象施設や周辺の地震観測地点の地表面に常時微動計を設置し、水平方向2成分と鉛直方向の地盤の微動(加速度あるいは速度)を計測します。

計測では、解析に必要となるデータを確保するため、15分程度の連続観測を行います。

常時微動観測で得られた波形とスペクトル解析結果(H/Vスペクトル)

常時微動観測結果に基づくスペクトル解析

常時微動観測により得られた加速度あるいは速度の時刻歴データから、交通振動等による乱れの影響の少ない3区間を任意に抽出し、各区間のH/Vスペクトルを算定した上で、3区間の平均値を当該箇所のH/Vスペクトルとして設定します。

なお、このH/Vスペクトルのピーク周波数が、サイト増幅特性のピーク周波数と一致することを利用して行う補正が一般的な補正方法になります。

地震動に影響を及ぼす要因(震源特性・伝搬経路特性・サイト特性)

地震波形作成

港湾・空港施設の耐震性能照査や対策工の検討を行う際に必要となる地震動波形は、震源特性、伝搬経路特性、サイト特性(サイト増幅特性およびサイト位相特性)を考慮した強震波形計算を行い設定します。

津波シミュレーション・津波被害予測

対象地域での想定地震の発生時における津波の伝播状況や遡上過程等について、地形や地震時の地殻変動、構造物等をモデル化した上でシミュレーションします。なお、津波対策前後のシミュレーション結果を比較することで、構造物等による津波の低減効果も評価できます。

また、津波シミュレーションによる結果に基づき、浸水想定区域図の作成や津波災害警戒区域の設定、津波による被害額予測等の防災計画の検討も行います。

津波高のシミュレーション結果(南海トラフの巨大地震)

津波シミュレーション

南海トラフ巨大地震による津波等、想定する地震による津波を解析して、水位や流速の経時的な変化を確認できます。また、津波の伝播状況を再現したCGも作成できます。津波に伴う土砂移動や漂流物の影響についても、シミュレーションにより調べることができます。

整備率と被害額の関係

津波被害予測

効果的な津波対策の提案だけでなく、その対策効果の検証までの一連の検討を実施できます。また、整備率と被害額の関係や、対策に要する費用等に基づき、その対策の効果(B/C)を算出することも可能です。

大規模盛土造成地の地震時の変動予測調査

平成7年の兵庫県南部地震等の大地震により、谷や沢を埋めた盛土や傾斜地に腹付けした盛土に滑動崩落が生じ、多くの宅地被害が発生しています。これより国土交通省では、全国に分布する大規模盛土造成地の滑動崩落に対する予防対策を支援しています。 当社では、大規模盛土造成地に対する地震時の変動予測調査として、詳細な測量や土質調査等を計画、実施した上で、地震時の安定計算を行い、安全性の評価を行っています。

大規模盛土造成地の種類と地震に伴う滑動崩落のイメージ

大規模盛土造成地とは

盛土造成地の内、以下の何れかの要件を満たすものを大規模盛土造成地といいます。

①谷埋め型:盛土面積が3,000m2以上

②腹付け型:盛土をする前の地盤面の水平面に対する角度が20°以上、かつ、盛土高さが5m以上

大規模盛土造成地の地震に伴うすべり崩壊の模式図

盛土の安全性評価

盛土造成時に十分な締固め管理が行われていない脆弱な盛土や、地下水位が高い盛土は、地震に伴う、すべり崩壊等の高い危険性を有しています。

当社では、このようなすべり崩壊の危険性の高い大規模盛土造成地を抽出した上で、測量、土質調査等により現地情報を取得し、それらのデータに基づき地震時の安定解析を実施することで、地震に伴うすべり崩壊の危険性を評価します。

盛土規制法に基づく調査

令和3年7月、静岡県熱海市で発生した大規模な土石流災害等に伴い、危険な盛土等を包括的に規制するための「宅地造成及び特定盛土等規制法」(通称「盛土規制法」)が令和5年5月26日から施行されています。これより、全国の各自治体では令和5年度より、盛土造成の規制を要する区域(規制区域)の設定に向けた基礎調査に着手しています。 当社では、令和5年度より、盛土規制法に基づく規制区域を設定するための基礎調査業務を実施しています。また今後、規制区域内における既存盛土の調査、盛土の安全性把握調査の優先度評価、レベル2地震動を対象とした液状化を考慮した安定性検討、及び対策工の検討にも取り組んでいきます。

規制区域のイメージ

規制区域の設定

盛土等が崩落した場合、また土石流となった場合、人家等に被害を及ぼしうる区域として、基礎調査により「宅地造成等工事規制区域」及び「特定盛土等規制区域」を指定します。

①宅地造成等工事規制区域
市街地・集落、それに隣接・近接する土地の区域を抽出して、規制区域を設定します。

②特定盛土等規制区域
盛土等の崩落により流出した土砂が土石流となって渓流等を流下し、保全対象に到達することが想定される渓流等の上流域を抽出して、規制区域を設定します。

対策工のイメージ

安全性把握調査及び対策工の検討

規制区域内で抽出された既存盛土に対し、安全性把握調査として、常時及び地震時の安定性検討を行います。地震時の安定性検討では、レベル2地震動に対する液状化判定に基づき、必要に応じて地震時に発生する過剰間隙水圧を考慮した解析を行います。

安定性検討の結果、安定性が確保されないものと判定された盛土に対して、対策工の検討を行います。対策工は抑制工※1及び抑止工※2に分類され、工法の比較検討することにより対象地区で最適な工法を決定します。

※1 抑制工:主に排水処理等により地下水を排除する工法
 ※2 抑止工:主に杭やアンカー等の設置により抵抗力を高める工法

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