弊社の砂防分野では、土石流対策だけでなく急傾斜地対策、落石対策、地すべり対策、砂防施設点検から長寿命化計画策定、落石対策、道路防災点検から対策設計、土砂災害防止法基礎調査等、周辺分野を含めて土砂災害に係るソフト・ハード対策全般を網羅しています。特に、災害多発地域である広島県に本社を置く会社として、災害対応については実績と自信があります。

気候変動に伴う豪雨の頻発化、国土強靭化施策、災害に強いまちづくりなど砂防を取り巻く環境は日々変化しています。従来のコア技術と新技術を融合し、新たな問題の解決に尽力します。

土石流対策

近年、気候変動に伴う豪雨・長雨が頻発しており、激甚な土砂災害が毎年のように発生しています。当社は土砂災害発生数の多い中国地方に拠点を置き、一連の土石流対策から突発的な災害対応まで多くの実績があります。渓流調査、砂防基本計画、砂防施設設計は土石流対策の基本ですが、最近ではCIM(Construction Information Modeling)を活用して3次元的に施設配置や施設設計を検討し、業務の効率化や高度化を図っています。

渓床堆積物調査

渓床堆積物調査

渓流調査

渓流から流出する土砂・流木量を想定するために、渓流調査を行います。渓流調査は、渓床堆積物調査、流木調査、崩壊地調査、礫径調査、pH調査等を実施します。渓床に堆積する不安定土砂の厚さは、鉄筋を打ち込むなどして浸食深さを推定します。これらの調査は、砂防施設の規模を決定する上で重要な基礎情報となります。

砂防施設配置計画図

砂防施設配置計画図

砂防基本計画

対象渓流の計画基準点から上流の流域において、今後流出しうる土砂・流木量を算出し、これを100%整備可能な砂防施設の配置を検討します。砂防堰堤の位置や形式、規模を複数パターン検討し、経済性や施工性に優れた最適案を選定します。砂防基本計画は、1渓流からの土石流を対象とする地先砂防と、複数の渓流を包含する大渓流を対象とした水系砂防があります

砂防堰堤3次元モデル

砂防堰堤3次元モデル

砂防ソイルセメントダブルウォール堰堤

設計事例
砂防ソイルセメントダブルウォール堰堤

砂防施設設計

砂防基本計画をベースとして、砂防施設に係る各種調査・計算・設計を行います。砂防堰堤では、堰堤周辺の平面測量や縦横断測量、基礎地盤確認のためのボーリング調査を実施します。これらを基に、砂防堰堤の予備・詳細設計を行います。土石流の流体力等の設計外力に対する設計計算を行い、堰堤構造を決定し設計図や数量計算書を作成します。また、土石流発生後の除石を行うための管理用道路も合わせて設計します。最近では、CIMを活用して出来形の3次元モデルを作成し、景観検討や施工計画検討に用いるとともに、住民説明用として3D動画を作成することもあります。

土石流災害

土石流災害

災害対応

当社が本社を置く広島県は、土砂災害危険箇所が全国で最も多く、最近でもH11年,H26年,H30年,R3年に同時多発的な土石流災害が発生しています。国や県の要請を受け、災害発生直後から現地に入って被災調査を実施しています。被災調査では土石流の氾濫範囲や家屋の被災状況等を調べ、災害関連事業の採択基準を満たす渓流について申請書を早急に作成することが求められます。多くの災害対応の経験から、初動から対策設計まで一連で対応致します。

土石流シミュレーション事例

土石流シミュレーション事例

土石流シミュレーション

土石流災害の再現、無施設時の氾濫状況や対策工の効果評価などを視覚的に捉える方法として、土石流シミュレーションは効果的です。対策施設を3次元モデルで構築し、解析データに取り込むことも容易になり、シミュレーションの活用場は今後も広がっていきます。当社では、HyperKANAKOやIRICを用いた解析を行っています。

急傾斜地対策

広島県南部は広島花崗岩類と呼ばれる風化浸食に脆弱な地質で覆われており、強風化して土砂状となったマサ土は降雨によって崩れやすい性質を持っています。これまでにも豪雨時に県内で同時多発的な急傾斜地の崩壊が度々発生しています。当社は災害発生後の初動調査から対策工設計まで多くの実績を持っており、災害に精通したエキスパートが多数在社しています。災害対応だけでなく、事前防災として自然斜面の調査から対策工検討も行っています。急傾斜地の現場は狭隘で施工に難航することが多いですが、一般工法だけでなく新工法も含めて施工性や経済性に優れる工法を提案致します。また、風致保全地区等における景観設計も実績があります。

崩壊地調査

崩壊地調査

急傾斜地調査

崩壊地の地形、地質について詳細な現地調査を行い、崩壊に至るメカニズムを推定します。地表面以深については、ボーリング調査や簡易動的コーン貫入試験等により地盤状況を把握します。専門技術者による現地調査により、対策工検討に必要な各種調査を提案し、迅速に調査設計を行います。

吹付法枠工(災害復旧)

設計事例
吹付法枠工(災害復旧)

待受式擁壁工(風致保全地区における景観設計)

設計事例
待受式擁壁工(風致保全地区における景観設計)

対策工設計

各種調査を基に、今後想定される現象を推定し、対策工の検討を行います。一般的に、斜面の高さに応じて吹付法枠工や待受式擁壁工が選定されますが、現場条件に応じてアンカー式防護柵や杭式防護柵といった新工法の適用も検討します。歴史のある寺社など風致保全地区に指定されている地域では、周辺の景観と調和するよう景観に配慮した設計も行います。最近では、土砂災害防止法に基づく土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)内での開発や対策について、公共・民間からの問い合わせが増えています。当社は、土砂災害防止法基礎調査と急傾斜地対策の双方に精通しており、最適な解決策を提示致します。

急傾斜地の崩壊

急傾斜地の崩壊

災害対応

弊社が本社を置く広島県は、土砂災害危険箇所が全国で最も多く、最近でもH11年,H26年,H30年,R3年に同時多発的な急傾斜地の崩壊が発生しています。県や市町の要請を受け、災害発生直後から現地に入って被災調査を実施しています。被災調査では崩壊地や家屋の被災状況等を調べ、災害関連事業の採択基準を満たす渓流について申請書を早急に作成することが求められます。多くの災害対応の経験から、初動から対策設計まで一連で対応致します。

地すべり対策

地すべりとは,山地や丘陵の斜面で,これを構成する地塊の一部が、降雨による地下水の上昇や土塊バランスの変化によって平衡を破り,下方に移動する現象です。崩壊より相対的に移動速度が遅い特徴があります。弊社では、地すべり発生時の調査から解析、対策工の設計まで、一貫して対応致します。

立体図による地形判読例

立体図による地形判読例

3次元データを用いた地すべり対策工の地中配置モデル

3次元データを用いた地すべり対策工の地中配置モデル

地すべり調査

地すべり変動の素因・誘因やすべり面形状、運動機構などを解明するために、地表踏査、ボーリング調査、地下水観測、動態観測等必要な調査を計画・実施します。複雑な地形や広域調査の際にはUAV等のレーザ測量も活用します。このデータから作成した立体図を判読することで、植生に覆われた微地形を把握できるほか、災害時における広域の速やかな現況把握は、周辺斜面も含めた今後の対策方針の決定にも寄与します。

地すべり解析

安定解析を実施し、地すべりの安定化に必要な対策工を選定します。調査・観測結果から推定される地盤特性や地すべりの運動機構は、これらを検討するうえで重要な条件となります。

地すべり対策設計

地すべり対策工として、地下水排除工(横ボーリング工、集水井工)、押え盛土工、頭部排土工、グラウンドアンカー工、鋼管杭工など多様な工種を設計します。対策工が複数になり地中での交錯が懸念される場合は、地中での干渉チェックを実施するなど、3次元データを活用した検討も行っています。

砂防施設点検~長寿命化計画策定

地域住民の安全を確保するために砂防施設の継続的な新設が求められていますが、多数の既往施設の効果を維持することも重要です。砂防三法が制定されてから多くの施設が施工されてきましたが、今後、経過年数が50年を超える施設が多数あることが懸念事項となっています。これを受けて、定期的な砂防施設点検や長寿命化計画の策定を行っています。

堰堤基礎の洗堀

堰堤基礎の洗堀

吹付法枠工の浮き

吹付法枠工の浮き

砂防施設点検

砂防、地すべり、急傾斜施設は、これまで全国で多数設置され効果を発揮してきましたが、経年劣化や外部要因により変状が発生し、期待する効果が見込めない施設も増えつつあります。定期的に点検することにより、変状の進行性を把握し、施設の健全度を診断します。変状の確認だけでなく、変状発生の原因を追究し対策検討に反映することが重要です。当社では、砂防施設設計に精通した技術者が点検を実施し、的確な診断を下します。最近では、UAVや360°カメラを利用した点検の効率化や高度化も図っています。

堰堤基礎の洗堀

予防保全と事後保全のトータルコスト比較イメージ

長寿命化計画策定

砂防施設の長寿命化に関しては、H31.3「砂防関係施設の長寿命化計画策定ガイドライン」で従来の事後保全型から予防保全型の維持管理に転換することが示されました。その後、R2.3、R4.3と改訂され、UAV点検の活用や年次計画の整理方法等が加わっています。長寿命化計画は、点検結果の分析、施設の劣化予測、対策工法の検討、ライフサイクルコスト算定からトータルコスト算定・平準化を行い、対策優先度まで決定します。当社は、砂防、地すべり、急傾斜施設の全てで長寿命化計画の策定実績があります。

落石対策

面的に被害が発生する土石流やがけ崩れといった土砂災害と異なり、落石はピンポイントで甚大な被害が発生するおそれがあります。道路沿いの斜面内には落石の発生源となる浮石や転石が多数存在しており、網羅的に調査して適切な対策工を選定する必要があります。当社では、土砂災害と並び落石対策で多くの実績を有します。

落石災害

落石災害

落石調査

落石発生源となる斜面内の浮石・転石を対象として、網羅的に落石調査を行います。個々の石について位置、礫径、斜面勾配等を計測し、計画施設位置での落石エネルギーを算出します。道路沿い斜面での落石調査は、落石が発生しないよう慎重に行う必要があります。

高エネルギー吸収型落石防護柵工

設計事例
高エネルギー吸収型落石防護柵工

ポケット式落石防護網工

設計事例
ポケット式落石防護網工

対策工設計

落石対策は発生源対策の落石予防工と待受対策の落石防護工を組み合わせて、最適な工法を選定します。落石エネルギーの大きい巨礫はロープ伏工などの落石予防工で対策しますが、数千kJの落石を捕捉する高エネルギー吸収型の落石防護工も開発されています。当社は、落石災害の対応を含めて、落石調査から対策工設計まで多くの実績を有します。

道路防災関連

道路交通を妨げる現象としては、落石・崩壊、岩盤崩壊、土石流、擁壁・盛土の損傷など様々ありますが、これらを未然に防ぐために道路防災点検を行っています。また、変状の著しい箇所や災害発生箇所について、対策工検討から詳細設計を行います。法面上の点検調査は危険を伴う上、通行車両への落石等の危険性もあることから、UAVを用いた点検やSfM解析による3Dモデルなど新技術を活用した効率化・高度化を図っています。

安定度調査

安定度調査

SfM解析による3Dモデル

SfM解析による3Dモデル

道路防災点検

道路防災点検は初回の安定度調査と次回以降のカルテ点検からなります。安定度調査は斜面全体を踏査し、落石・崩壊や土石流等の危険性を評価します。カルテ点検は定期点検として、変状の進行状況を把握し、必要に応じて対策工の提案を行います。また、最近では、一定以上の高さを有する切盛土の土工構造物について、特定道路土工構造物点検も行っています。長大法面上の点検は危険を伴うため、UAV撮影写真を基にSfM解析を行い、法面全体の3Dモデルを作成して詳細な変状を確認しています。

災害状況と施工後状況

災害状況と施工後状況

災害状況と施工後状況

道路法面対策設計

道路法面災害は落石や大小の崩壊から地すべりまで様々です。ルート選定時に予見できない地形地質のリスクが顕在化し、道路交通に支障が生じることがあります。幹線道路では道路交通を確保しながら、調査設計から施工まで行うことが求められます。通行車両の安全を確保しつつ施工完了するために、道路管理者、設計者、施工者の3者が協働して最善を尽くします。

土砂災害防止法関連

H11年6月に広島県で発生した広島豪雨災害は、山際に宅地開発が進んだことにより被害が拡大しました。これを受けてH13年に土砂災害防止法が施行され、全国一斉で土砂災害の恐れのある区域を設定する基礎調査が進められてきました。これまでに1巡目が完了し、現在は2巡目の新規抽出や基礎調査が行われています。当社は、法律制定の契機となった広島県を始め、全国各地で調査実績を有しています。

区域設定事例

区域設定事例

土砂災害防止法基礎調査

急傾斜地の崩壊、土石流、地すべりの3現象について、土砂災害警戒区域(イエローゾーン)と特別警戒区域(レッドゾーン)を設定します。現地で詳細な地形調査を行い、砂防基盤図と呼ばれる数値地図とGISを用いて区域を設定します。2巡目調査では、新規抽出箇所の調査や対策工が施工された箇所の再調査を行っています。当社では、これまでに全国で300業務を超える実績を有しています。また、基礎調査マニュアルや特定開発行為に係る技術基準の策定、改訂も実績があります。

深層学習AI家屋抽出

深層学習AI家屋抽出

AI活用した新規箇所抽出

2巡目調査では新規家屋や地形改変箇所を抽出して、これに係る斜面や渓流を新規抽出箇所として調査します。しかしながら、県内全域を対象として新規家屋を探すことは膨大な作業量となります。当社は独自の深層学習AIを用いて、2時期の航空写真から家屋を抽出し、差分解析によって新規家屋を効率的に抽出しています。家屋や道路の抽出精度は95%を有し、地形改変は精度向上について検討中です。

新技術関連

近年、目覚ましく進歩する計測技術やソフトウェアを積極的に導入し、業務効率化や品質高度化を図っています。先輩技術者から受け継がれているコア技術は大切にしつつ、新技術を適用することにより付加価値を創出しDX推進を図っています。ここでは、新技術関連の取り組み事例を幾つか紹介します。

山口県岩国市R’表示システム(復建調査設計と広島大学で作成)

山口県岩国市R’表示システム(復建調査設計と広島大学で作成)

6時間先までのR’予測

6時間先までのR’予測

雨量指標R’

雨量指標R’は、先行降雨の影響と短時間降雨を合わせて1つの値で表現することが可能な指標です。R’はリアルタイム降雨データを用いてコンターマップを描くことが可能となり、土砂災害危険度の空間的分布は直感的に把握することができます。また、地域ごとの災害履歴や降雨特性を考慮した「土砂災害警戒避難のための判断基準」をご提案致します。 ※R’は広島大学・呉工業高等専門学校との共同研究により開発した雨量指標です。

砂防堰堤景観検討3Dモデル

砂防堰堤景観検討3Dモデル

吹付法枠・鉄筋挿入工3Dモデル

吹付法枠・鉄筋挿入工3Dモデル

BIM/CIM

当社では、H26年から新入社員向けに集中的なCIM研修を開始し、現在は約200人の社員が各事業部で活躍しています。特に、砂防分野では若手技術者を中心にCIMを活用し、砂防堰堤の3Dパースを作成して景観検討や住民説明に利用するとともに、仮設工を含めた施工の各段階をモデル化し、構造細部や施工計画の精度向上を図り付加価値を創出しています。3Dモデルから各種数量を算出することも検討しており、CIM活用による業務の効率化に向けた取り組みも行っています。

地すべりへの適用事例

地すべりへの適用事例

変状のあるコルゲート管への適用事例

変状のあるコルゲート管への適用事例

SLAM技術

近年、航空レーザや地上レーザなど現地測量に代わる地形情報の取得が進んでいますが、ICT技術の進化に伴い、計測機器もよりコンパクトになり身近なものになっています。当社では、SLAM(Simultaneous Localization And Mapping)技術を利用したハンディレーザースキャナーを導入し、砂防・斜面防災分野での利活用について検証を進めています。高密度な点群データを解析することにより、微地形の把握や樹木や礫の形状まで詳細に計測することが可能となります。コルゲート管の変状は3次元的に生じていますが、測量では計測することが難しく、SLAM技術で計測することで変状の状況を把握することができました。

道路法面への適用事例

道路法面への適用事例

土石流模型実験への適用事例

土石流模型実験への適用事例
(広島大学実施の実験補助)

SfM解析

SfM(Structure From Motion)解析は、写真測量技術の応用で撮影位置、姿勢、レンズの歪み等から画像の三次元分布を推定し3Dモデルを作成する手法です。対象の規模に応じて、UAVやデジタルカメラで写真撮影すれば、SfM解析で容易に3次元モデルが作成可能です。法面高所の変状確認や断面取得などモデルの利用は多岐に渡ります。CIMと絡めて土量算出や縦横断図作成を行っています。現在は、技術開発としてSLAM技術で取得した点群データとSfM解析モデルの精度検証を行っています。また、CIM景観検討用の地形モデルとしての利用も模索しています。

シナリオ作成例

シナリオ作成例

RPA

ロボティックプロセスオートメーション(Robotic Process Automation)、通称RPAは人がPC上で行う作業を自動化するツールです。当社ではWinActor((株)NTTデータ)を導入し、シナリオ作成から実行まで直営で行っています。砂防分野では、全国一律の様式で作成される道路防災点検の安定度調査や防災カルテの入力に適用しています。RPAの適用により作業の効率化が図られるだけでなく、転記ミス防止といった付加価値も得られます。今後は他の点検業務への適用や、感度分析を要する各種解析への適用といった利用拡大を図ります。

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