『グリーンスローモビリティシンポジウム』開催報告
グリーンスローモビリティシンポジウム~Green! Slow! Safety! Small! Open! 地域を開く
New Public Mobility!!~開催報告
1.趣旨
2018年6月25日(月)に大田区産業プラザPiO 大展示ホールにおいて、地域が抱える様々な交通の課題の解決と、地域での低炭素型モビリティの導入を同時に進められる「グリーンスローモビリティ(※)」の推進に向けて、グリーンスローモビリティを活用した実証調査(手動運転)を今年度行うため、グリーンスローモビリティの理解を深めていただくためのシンポジウムを開催いたしました。
※グリーンスローモビリティ…電動で、時速20km未満で公道を走ることが出来る4人乗り以上のモビリティ
2.プログラム/講演資料
【開催日時】 6月25日(月)14:00~17:00
【主 催】 国土交通省
【後 援】 (公財)交通エコロジー・モビリティ財団
【場 所】 大田区産業プラザPiO
プログラム内の講演資料は以下よりダウンロードが可能となっております。
14:05 基調講演① 東京大学大学院 新領域創成科学研究科 鎌田実 教授
14:25 基調講演② (公財)交通エコロジー・モビリティ財団 圓山博嗣 交通環境対策部長
14:45 活用事例① 輪島商工会議所 里谷光弘 会頭
15:00 活用事例② 京都府建設交通部交通政策課 小林豊 課長
15:15 活用事例③ 株式会社桐生再生 清水宏康 代表取締役
15:30 休 憩
15:50 パネルディスカッション
「地域を開く!グリーンスローモビリティの可能性について」
パネリスト:名古屋大学大学院 環境学研究科 加藤博和 教授
大分県姫島エコツーリズム推進協議会 寺下満 会長
東京都豊島区都市整備部 原島克典 参事 交通・基盤担当課長事務取扱
ヤマハモーターパワープロダクツ株式会社 雄谷誠祐 取締役ゴルフカー事業推進部長
株式会社シンクトゥギャザー 宗村正弘 代表取締役
(公財)交通エコロジー・モビリティ財団交通環境対策部 熊井大 課長
コーディネーター: 国土交通省総合政策局環境政策課 三重野真代 課長補佐
16:45 「グリーンスローモビリティポイント集」と実証調査地域募集の説明
国土交通省総合政策局環境政策課 三重野真代 課長補佐
17:00 閉会挨拶
3.シンポジウム開催報告
■開会
■基調講演
まず、基調講演として、東京大学大学院 鎌田実教授及び公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団 圓山博嗣交通環境対策部長から、それぞれご講演をいただきました。
鎌田教授からは、少子高齢化と人口減少が進む中、公共交通に係る地域の現状と、そのような状況下での、グリーンスローモビリティ活用への期待についてご講演をいただきました。グリーンスローモビリティの利点は、走行速度が20km/h未満であり、道路運送車両法の保安基準が緩和されるという点である一方、低速交通を十分理解し、地域交通の中での位置づけを明らかにし、低速交通の適用のフィールドを明確にしていくことの重要性についてもご指摘いただきました。
圓山部長からは、同財団が、これまで地域内や観光地において電動小型低速車の活用推進のため行ってきた調査や検討の経緯などについてご紹介頂きました。また、移動主体と地域ごとに域内交通の問題を整理し、電動小型低速車の優位性を踏まえ、それぞれ11の活用シナリオを明らかにしたこと、さらにそのシナリオを検証するための実証調査を今年度、全国3地域(横浜市金沢区、輪島市、松江市)で行う予定であることなどが報告されました。
■活用事例の紹介
続いて、活用事例の紹介として、輪島商工会議所 里谷光弘会頭、京都府建設交通部交通政策課 小林豊課長、株式会社桐生再生 清水宏康代表取締役より、それぞれご発表いただきました。
里谷会頭からは、輪島市における観光地ならではの交通課題、さらには地域の交通弱者の現状に対し、グリーンスローモビリティをどのように活用しているかなどについて、ご発表いただきました。その中で、継続的な運行においてはビジネスモデルの検討も必要であること、また交通弱者に関しては、誰もが安全して移動できる環境の整備が重要であることなどについて、ご発言いただきました。
京都府小林課長からは、これまで京都府で進められてきたグリーンスローモビリティの導入事業の事例の中から、特に伊根町と和束町の取組みについて詳しくご紹介いただきました。漁業と観光のまちである伊根町の課題は、自家用車利用の観光客が多いものの、道路が狭く、地域住民や観光客の安全確保であり、宇治茶の主生産地である和束町の課題は、自家用車利用者の茶畑周辺への乗り入れで、その課題解決にグリーンスローモビリティの優位性が役立ったとのことでした。また、いずれの取り組みにおいても、地域で運営団体を立ち上げ実証を行い、利用者からの高い評価が得られていることもご報告いただきました。
清水氏からは、桐生市を拠点にグリーンスローモビリティ eCOM-8の実証に関わりはじめたその経緯と、現在の国内導入状況、さらには地域住民の見守りや外出の機会を拡大するなどのグリーンスローモビリティ導入に対する新たな可能性などについてご紹介いただきました。また、これまでの様々な導入実績から、今後導入をご検討なさる地域に向けて産官学民金を巻き込んだ地域全体の支えが重要であるとのご助言もいただきました。
■パネルディスカッション
パネラー: ・名古屋大学大学院 環境学研究科 教授 加藤 博和 氏
・大分県姫島エコツーリズム推進協議会 会長 寺下 満 氏
・京都豊島区都市整備部 参事 交通・基盤担当課長事務取扱 原島 克典 氏
・ヤマハモーターパワープロダクツ株式会社 取締役 ゴルフカー事業推進部長 雄谷 誠祐 氏
・株式会社シンクトゥギャザー 代表取締役 宗村 正弘 氏
・(公財)交通エコロジー・モビリティ財団交通環境対策部 課長 熊井 大 氏
コーディネーター: 国土交通省 総合政策局 環境政策課 課長補佐 三重野 真代 氏
パネルディスカッションは、グリーンスローモビリティの開発者と実際に事業として活用している方々、さらには有識者をパネリストとしてお向かえし、議論が行われました。
グリーンスローモビリティの開発者であるヤマハモーターパワープロダクツ㈱ 雄谷氏からは、ゴルフカーを地域モビリティとして適用していくために進めてきた実証実験の経緯や、ゴルフカーを活用してお年寄りがアクティブに生活するアメリカのザ・ビレッジスの事例などについてご紹介いただきました。また、㈱シンクトゥギャザーの宗村氏からは、対面シートを導入したeCOMシリーズの車両の特徴と、公道で走るためナンバープレートを取得した際のご苦労などについてもご紹介頂きました。
実際に、電動ゴルフカートを用い、今年6月まで2年間に渡り社会実証を行ってきた大分県姫島エコツーリズム推進協議会 寺下会長からは、島内でのカートの利用目的と、具体的な実証の内容についてご紹介いただきました。また、2019年に開催される東アジア文化都市、2020年のオリ・パラ開催に向け、eCOM-10の導入を決めた豊島区の原島課長からは、導入を決めた経緯と予定されている今後の動き、さらには歩行者との親和性の高いバスを走らせることでの話題性や、街の価値向上への期待などについてお話しいただきました。
これを受け、交通エコロジー・モビリティ財団の熊井氏からは、車が社会を作る時代から、社会が車を作る時代に変わりつつある今、今後3~5年スパンで低速・電動、先々は自動運転につながるようなモビリティ及び地域交通について、積極的に検討していくことの重要性が指摘されました。
また、名古屋大学大学院加藤教授からは、グリーンスローモビリティはフィーダー・歩行支援としての役割のほか、自動運転とも相性が良いが、輸送面から見た場合、そのポテンシャルの低い点が課題とのご指摘がありました。しかしその上で、単に輸送面から見たポテンシャルではなく、街全体に及ぼす外部効果を意識・考慮しつつ、その導入検討を進めていくことが必要であること、さらには輸送面だけでない魅力がグリーンスローモビリティには期待できる、その実現のためには地域の方が一体となった事業スキームの検討も必要であることなどのご発言をいただきました。
■グリーンスローモビリティポイント集と実証調査地域募集の説明/閉会
■車両展示コーナーの様子